低フォスファターゼ症とは

 Hypophosphatase(HPP)

概念

 骨や歯の正常な形成に働くアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase:ALP)と呼ばれる酵素が遺伝的原因により働きがわるくなり、骨や歯が弱くなる病気です。ALPは肝臓をはじめ、腎臓、骨芽細胞、小腸など、広く全身に分布していますが、その大部分は細胞膜上に局在し、一部が血清中に放出され、血清中に存在するALPのほとんどは肝臓型または骨型のALPである。

 血清中のALP濃度が上昇する場合には、骨折や前述の臓器に損傷があった場合ALP値の上昇するため、臨床検査ではALPは主として上昇しているときに肝機能異常の指標の一つとして扱われていますが、本疾患では逆に低値となります。このため、本疾患は見逃されていることがしばしばあります。疾患概念が進むにつれ診断例が現在増えてきています。8つの病型に別れ、重症例は15万人に1人程度と非常に稀な疾患ですが、遺伝子の保因者は本邦で600人に一人、100人に一人の国の非常に多い国もあります。成人型や歯に症状が限定する型もあります。小児では、成長期にはもともとALPは高いため、成人の正常値のため低値が見逃されていることがあります。また、骨折が頻度の高い症状であり、骨折時は本疾患患者でも高い(正常値)を示すこともある。

病型

病型

周産期重症型は生まれつき、骨の石灰化がわるく、頭蓋骨もレントゲンでは膜様で、肋骨も細く、肺の低形成を伴い呼吸障害が著明で医療介入がなかれば、致死的となります。小児型では4歳以前の乳歯の脱落などで近年多く見つかってきています。

成人型HPPのスクリーニング

① ALP(アルカリフォスファターゼ)の低値 (男性:33U/L以下、女性:29U/L以下)
② 骨折の既往歴や、自覚的に倦怠感が著明な方、原因不明の関節痛・筋肉痛の方
③ 遺伝性疾患なので、ご本人が無症状でも、ご家族に②や、次のような症状を認める場合
         1)乳歯の早期脱落(1-4歳で抜けてしまった)
         2)低身長
         3)歩行障害、骨折しやすい